「不安症候群」

 入試シーズンも過ぎ一息吐いている。今年も無事それぞれ進学先が決まった。毎年進学先を相談しながら決める時、彼らに「自分の欲しいものは自分の力で勝ち取れ」とハッパをかける。生徒の希望と学力それに親の希望など加味しながらこちらの基準としては個々には様々な要素はあるが、合格率が60%以上でちょっと危機感もあるところを提示する。

 しかしこちらの意に反し最近の生徒は無理をしない。90%以上自分の成績で合格できる範囲の学校を選ぶ傾向にある。それもかなり自分に甘く査定する。現在の学力を維持できるかの危機感は持っているが、いわゆる挑戦的な野望を持たない。だから是非この学校へ行きたいとか申し出る生徒はいないし、それを勧めるのにこちらも躊躇する。

 ことさら上位校をと勧めるわけではないが、そうしたエネルギーとか意欲がなければ無駄である。一つの目標を目指そうとするにはそれに向かう意欲とエネルギーが不可欠だから。たとえ運良く?合格してもその先が心配である。杞憂かも知れないがそうした自意識の生徒を見ていると心配にならざるを得ない。

 そこで今度は余裕でいける学校を選ぶ彼らに「鶏口となるも牛後となるなかれ」という。学力だけの問題ではない。総てにおいて上に立つ気概が欲しい。どのような集団でも、それが数人であってもそれを率いるというとそれなりの責任感や指導力や判断力が要求され、身に付くものだ。精神衛生上もいい。多少の学力優秀よりか、将来きっと役に立つ。学力の優劣は学校時代だけの物差しで大半は「20才過ぎればタダの人」である。ほとんどが、集団的人間関係や家族関係など根本的な事柄で四苦八苦するのだからそれに対応できるよう訓練することの方が大切であろう。

 おしなべて今の青少年は「不安症候群」であり何らかの自信、それが自己満足であろうと必要である。多くの青少年犯罪も多くがこれに一因していよう。考えずに行動に出したり変に反発したり逆に迎合したりするのは不安からの自己防衛であろう。合格早々進学先での漠然とした不安を訴える生徒もいる。もうそうなると言うことは一つ「人間万事塞翁が馬」であると。 2000.5